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5月22日、去年に引き続いてのお茶セッション第三弾「日本茶のすゝめ―新茶―」を開催いたしました。パネリストは、博多の茶酒房 万の徳淵卓さん、一茶庵宗家嫡承の佃梓央さん、司会はEn tea主宰の丸若裕俊さんというお馴染みメンバーです。このシリーズの特徴は、あまり小難しい話は横に置いておいて、のんびりゆるやかに時間が流れていくことです。今回も、お話は時々脇に脱線していきつつ、愉快なお話が繰り広げられました。

始まりは、それぞれの新茶の思い出から。彬子女王殿下は、石清水八幡宮のお茶園と嬉野の茶畑で茶摘みを経験された時のお話を。佃さんは、日本では新茶は初夏の風物詩だけれど、中国ではお茶は立春から小満の頃に摘まれるので、少し感覚が違うというお話。様々な産地のお茶を扱われる徳淵さんは、この時期は日本全国からお茶のニュースが届き、そわそわと落ち着かなくなられるとか。お茶に関わる仕事の人の性ですね。

そして徳淵さんが、茶と言う字を分解すると十+十(草かんむりの部分)と八十八になると教えてくださいました。十月十日は約280日、それに八十八を足すと365日になることから、365日お茶を飲みましょう!と。極度の面倒くさがりの彬子さまは、煎茶を入れるお湯を冷ます時間が待てないので、家で煎茶を入れることはほぼないそうですが、365日お茶は飲んでおられるそうです。ちなみに、108歳を茶寿といいますが、これは十+十+八十八が108になるからだそうです。

今回のハイライトは、それぞれがおすすめされる産地のお茶の飲み比べ。佃さんが宇治、徳淵さんが八女、丸若さんが嬉野の新茶です。佃さんは、まずは茶碗半分強のお湯を取って、急須に入れ、お茶を浮かべるというやり方です。先に茶葉を入れるのと、後から茶葉を入れるのでは、全く味が違うそうです。人間も、お風呂にゆっくりと足を入れるのと、突然お湯を上からかけられるのでは、気持ちが全然違いますよね。茶葉をびっくりさせないことがポイントだそうです。

徳淵さんも、茶葉をびっくりさせないために、まずは急須にお湯を取って温め、そこに茶葉を入れて蓋をして、少し蒸します。そこからお湯を注いで入れるといいそうですよ。宇治のお茶が苦みがぐっとくるしっかり主張した味だったのに比べ、八女のお茶は少し柔らかめのすっきりした味わいです。色も八女の方が透明感があり、黄色味が強い感じでした。

丸若さんのお茶は、急須に熱湯をそのまま注いで入れる釜炒り茶。とても素朴な小細工のない、後口がさわやかなお茶でした。視聴者の皆さんは、パネリストがあれこれ言いながらお茶を飲んでいて、どんな味なのかとやきもきされたと思います。このお茶の飲み比べセットは、心游舎のオンラインショップで6月くらいに数量限定で発売する予定ですので、楽しみにお待ちくださいませ。

最後は彬子さまが、赤坂の御用地内に茶畑があるというとっておきのお話を。園遊会で皇族方がお立ちになる丘の裏に茶畑があるそうで、子どもの頃によく遊んでおられたとか。赤坂の御用地は、紀州藩の上屋敷であった場所なので、そのころからあったものではないかと言うお話でした。そして、大正天皇の御製に新茶をお詠みになったものがあるとご紹介くださいました。目黒にあった西郷隆盛の弟の従道の別邸に行啓されたときの漢詩で、ほぼ処女作ともいえる18歳の頃のお作です。雨上がりの午後、お茶を焙じる香りと野薔薇の香りがふわりと漂ってくるような、情感あふれる御製ですよね。

お話が盛り上がり、時間オーバーしてしまいましたが、新茶を飲みたい!という気にさせられる充実したセッションであったのではないかと思います。

次回のオンラインセッションは、6月13日。立川志の八師匠をお招きした落語のセッションです。心游舎でも今まで取り上げたことのない落語。どんなお話になるか楽しみですね。

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