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3月29日、「江戸文化」をテーマにしたオンラインセッションを開催いたしました。講師は江戸文字書家の橘右之吉さんと歌舞伎俳優の坂東彌十郎さん、司会は和樂ライターのめがちゃんこと、高橋亜弥子さんです。今回は初めて平日夜に開催を試みてみましたが、いかがでしたでしょうか。

彬子女王殿下と右之吉さんは、満月と桜が美しい神田神社からの配信となりました。そんなわけで、まずは江戸時代の桜のお話から。江戸の桜の名所は、上野、飛鳥山、御殿山など様々あります。吉宗の頃に盛んに桜が植えられ、庶民も桜を楽しむようになりました。ただ、上野の寛永寺は、門跡寺院でもあり、徳川家の歴代の霊廟もあることから、大騒ぎするようなことはできず、飛鳥山や御殿山で物見遊山も兼ねての飲み食いしながらのお花見を楽しんでいたのだそうです。

歌舞伎にも桜が出てくる演目がたくさんあります。助六由縁江戸桜や義経千本桜などいろいろありますが、彌十郎さんは2016年にフランス、スイス、スペインで公演された「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」のお話をしてくださいました。通称「関扉(せきのと)」は、雪が降り積もる中、不思議に小町桜が咲き誇る逢坂の関が舞台です。関守の関兵衛(実は天下を狙う大伴黒主)と小町桜の精が戦う舞踊劇ですが、ヨーロッパの方々は真剣に見入っておられ、各劇場で満員のスタンディングオベーションがあったとか。右之吉さんは全公演同行されて、ロビーで実演をされ、大好評。彬子女王殿下もマドリッドでの公演を見に行かれ、現地の方があんなにたくさんいらっしゃって、喜んでいらっしゃる姿は感動的だったとお話されていました。

右之吉さんの書かれる江戸文字は、江戸文字と一口に言ってもいろいろあります。寄席文字、芝居文字、相撲字、髭文字など。牡丹の花を模した牡丹字などもあります。牡丹は花の王様。歌舞伎の連獅子や鏡獅子で獣の王様である獅子と牡丹がセットなのは、こんな理由もあるのです。浅草寺には雷門と書いた大きな提灯がありますが、元々は新橋(志ん橋)の提灯がかかっていたとか。右之吉さんが書かれた志ん橋の提灯は、本堂にかけられています。

彌十郎さんは、世界一背の高い歌舞伎俳優ですが、隈取が上手な歌舞伎俳優としても知られています。いろいろな種類の隈取がありますが、彌十郎さんが御自身で工夫して考えられたものも。緑や青の色は、日本画で使われる絵の具の顔料を細かく砕いて使われるのだそうです。

最後は右之吉さんの実演。花見の夜にふさわしく、花の字から。そして、月。最後は雪で、雪月花の美しい締めくくりとなりました。

次回は、4/17に心游舎の総会にご参加いただく形で、京都産業大学の小林一彦先生、中部大学の深谷圭助先生と共に「日本の年中行事」についてお話するセッションを計画しております。ぜひご参加くださいませ。

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