6月13日、心游舎では初となる落語をテーマにしたオンラインセッションを開催いたしました。ご登場いただいたのは、落語立川流真打の立川志の八師匠。司会は、太宰府天満宮権禰宜のファシリバーバーこと馬場宣行さんにお願いし、笑いが絶えないあっという間の1時間半のセッションとなりました。
江戸と上方、双方で発展した落語。まずは、志の八師匠が江戸流の「時そば」を見せてくださるところから始まりました。冬の寒い日、屋台の二八蕎麦屋を呼び止めた男が、そばを注文し、割り箸やつゆ、麵などを次々に褒めます。食べ終わった男は、蕎麦屋に掌を出させ、一文銭を一つずつ数えながら載せていきます。「ひい、ふう、みい、よお、いつ、むう、なな、やあ」とまで数えたところで、「今何刻(なんどき)でい」と蕎麦屋に聞きます。「九(ここの)つで」と言われると、そのまま「十(とお)、十一、十二、十三、十四、十五、十六」と、うまく一文ごまかして「ごちそうさん!」と言って立ち去ります。これを見ていた男が、早速真似をしようと、翌日細かい銭を用意して街に出ます。そば屋に入りますが、まずくて汚なく褒めようがありません。昨日の様に勘定をしますが、八まで数えて「何刻だい」と聞くと、「へえ四つで」「五つ、六つ、七つ、八つ……」と損をしてしまうというお話です。
落語は今まできちんと見たことがないという彬子女王殿下でしたが、師匠の話に終始大笑い。落語はお客さんの反応を見ながら話すので、しーんとした中でやるのは本当にきついと師匠は言っておられましたが、きっと画面の向こうの参加者の皆さんも、彬子さまの様に笑っておられたことと思います。
落語は、江戸時代に京都誓願寺の僧であった安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)が滑稽話を語ったのが始まりとされています。江戸落語は、人を集めて語る座敷噺であるのに対し、上方落語は往来で行う辻噺。いわゆる路上ライブをするミュージシャンと同じ。道行く人を引き留めるために、江戸落語でも使う扇子や手ぬぐいのほかに、見台や子拍子、膝隠といった小道具を使うという違いがあるのだそうです。協会も、江戸は落語協会、落語芸術協会、五代目円楽一門会、落語立川流と四つに分かれているのに対し、上方は上方落語協会のみ。江戸が見習い→前座→二ツ目→真打→襲名とステップアップしていくのに対し、上方は年季修行が明けたら襲名という流れ。一口に落語と言ってもいろいろ違うものですね。(いろいろと深くは語れない大人の事情もあるそうです)前座のときまでは、師匠の雑用をすべてこなさなければならず、お風呂に入っている時も含めて、片時も携帯電話を離すことができなかったそうです。「早く人間になりたい!」と思っておられたとか。厳しい修行に耐え抜いてこられたからこそ、師匠の光る話芸は生まれたのだなと思いました。
次は、参加してくれた子どもたちと一緒に、扇子と手ぬぐいを使ったワークショップ。扇子一つで割り箸を割ったり、そばをすすったり、変幻自在の表現をされる師匠。とにかくおそばが本当においしそうで、食べたくなってしまうのです。子どもたちも一緒に実演してみました。そして、扇子と手ぬぐいで何を表現しているかを早押しクイズで当ててもらいました。煙草を吸うのはわりとすぐわかりましたが、手ぬぐいの上部を引っ張るような仕草はなんでしょう。「チャックを開けて、手紙を出す!」という返答に、大笑いしながら「正解!」と師匠。楽しいひと時になりました。
最後に、上方流の「時そば」を見せてくださいました。同じ演目ですが、上方流は動作も大きく、登場人物もたくさん出てきます。これが往来の人に注目してもらうための工夫なのかと納得しました。同じ演目を違う演出で見比べる機会はなかなかありませんが、江戸と上方の違いをきちんと解説していただいた後だとより深く理解ができました。
志の八師匠からは、第二弾のオンラインセッションはもちろん、今度は対面でワークショップができたらとお話を頂いています。早く実現する日が来ることを祈るばかりです。
次回のオンラインセッションは、6月26日。去年もご登場いただきました祇園川上の加藤宏幸さんに七夕のお料理を教えていただきます。夏らしいお料理を頂けるのがとても楽しみです。
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