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2月27日、お能をテーマにしたオンラインセッションを開催致しました。
パネリストは能楽師の大槻裕一さん、京都産業大学のペレッキア・ディエゴ先生、司会は和樂ライターの新居典子さんです。心游舎キッズも中学生になると、だんだん部活などで忙しくなってきて、週末は時間が取れないことが多いということで、今回は夜の時間帯の開催を試みてみました。

まずは、ペレッキア先生にお能とは何かの解説をして頂きました。お能は、歌舞伎や文楽と違って、3週間毎日公演が続くことはありません。公演は一回限り、演者がそれぞれ練習して、合わせてのリハーサルは申し合せという一回程度。本番で全てが合うという一期一会の芸能です。舞台上の演者とお客さんとの出会いは、この世で一回しかないと思うと、今後お能を見に行くときの気持ちが変わってきそうですね。

ペレッキア先生から、それぞれのパネリストに「あなたにとって能楽とは?」という質問がありました。彬子女王殿下は、「いつもこれを言うと微妙な空気感になるのですが…」と前置きされてから、「能は主役がほとんど死んでいる」というお話を。新居さんは、歌舞伎や文楽と違って、舞台装置や小道具がほとんどないので、想像力をかき立てられると指摘。観客それぞれが、おそらく違うことをイメージしていて、でもそれでもいいというのが、とても日本文化らしいなと思います。

後半は、大槻さんから、大槻能楽堂で昨年初めてオンライン配信された能「雷電」のあらすじをわかりやすく説明して頂くところから始まりました。讒言によって、太宰府に配流され、失意のうちに亡くなった菅原道真は、自らの師であった法性坊の元に、復讐をしに行くので、宮中から祈祷を頼まれても行かないで欲しいと頼みに行きます。法性坊が、依頼があったら断りきれないと伝えると、道真は激怒。雷となって内裏を襲いますが、法性坊の法力でそれを抑え、道真は天満自在天神の名前をもらい、穏やかに帰っていくと言うお話です。

実際の動画を見ながら、ペレッキア先生と大槻さんで、所作や衣装、面などにどのような意味があるのかなど、動画を止めながら解説してくださり、彬子様と新居さんは、知らなかったことがたくさん!と感心しきり。柘榴を噛んで吐き出す場面は、柘榴が見える気がしますし、ドンドンと足を踏み鳴らす場面は、雷が鳴っているように感じられました。オンライン配信では、ワキ方の方が扇を落としてしまうというハプニングがあったそうですが、そんなときにはどのように対処するかなど、普段なかなか聞けないお話をたくさん聞くことができました。

お話が面白くて、ついつい聞き入ってしまい、時間はだいぶオーバーしてしまいましたが、とても充実した内容の1時間半でした。お能は難しくてちょっと。。。と思っていたけれど、奥が深くて、実際に見に行きたくなったというお声も参加者の方から届いています。雷電の映像を始め、様々な演目が大槻能楽堂のYouTube チャンネルで公開されていますので、もう一回見て、扇を落としたシーンを確認してしまったという方も。これをきっかけに、お能に興味を持って下さる方が増えることを願っています。

次回のオンラインセッションは、3月14日。アンケートでも希望が多かった着物についてのお話を、京呉服の老舗である千總さんがして下さることになりました。着物の仕組みや柄の合わせ方など、意外と知らないお話をたくさん聞かせて下さる予定です。ぜひご参加下さいませ。

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