11月6日、名古屋の聞安寺で、障子張りのワークショップを開催いたしました。講師は東北芸術工科大学准教授の杉山恵助さん。杉山さんは、彬子女王殿下が英国留学中に、大英博物館の平山スタジオでシニアコンサバターとして勤務されており、その時のご縁が元で、今回の企画が実現することになりました。
昔は、お正月を前に障子を張り替えたり、おじいちゃんおばあちゃんの家の障子張りをお手伝いしたりした経験のある人も多かったと思いますが、今は和室がある家も少なくなりました。日本家屋や和紙の魅力について、知るきっかけになればと思い、企画しました。
まずは、杉山さんが和紙についていろいろ教えてくださいました。和紙には裏表があること、破りやすい方向と破りにくい方向がある理由など、皆和紙を触りながら、なるほど~という顔をされています。和紙は、楮やミツマタなど、長い植物繊維が絡み合って漉いているので、とても丈夫で長持ちします。洋紙は、細かく砕かれたパルプを固めて作ったものなので、表面はなめらかで、書きやすいですが、弱いのです。みんなで、和紙と洋紙で紙相撲をしましたが、二枚重ねの洋紙と一枚の和紙では、和紙が勝ちます。3枚重ねの洋紙にも勝った人もいました。和紙が意外と強いと言うことに、びっくりした人が多かったようです。
そして、いよいよ障子張り。二組に分かれて作業開始です。小麦のでんぷん糊を、刷毛でぺたぺた枠に塗っていきます。すぐに乾いてしまうので、繰り返し塗ります。そして、二人で力を合わせて紙をそーっと置き、真ん中から外へ撫でて張りつけ、竹べらで撫でつけます。この竹べらは、絵画の修復をする人は、最初に自分で削るところから始めるそうです。
失敗することを見越して、余分に紙は切ってあったそうなのですが、誰も失敗しなかったことに先生たちがびっくりしていました。紙を張るときは、相手の呼吸や手の位置、動かす速度などに合わせて、自分も手を動かします。相手に合わせるという行為は、日常生活の中でも大切になってくることですね。
あるべき場所に障子を戻して完成。あまりに順調に終わってしまったので、もう二枚やればよかったなぁと杉山さん。最後に、みんなから感想を聞いたり、紙縒りを作ったりしました。「帰ったら、家の障子を破ってみたくなった!」と言う子も。「もう少し待とうか」とお母さんが言っておられました。昔は、文書をまとめるのはホッチキスではなく、紙縒りでした。新人の仕事はまずは紙縒りを作ることだった時代もあるそうです。杉山さんはするするっときれいで固い紙縒りができるのですが、皆さんかなり苦戦。彬子様も「全然できない…」とがっくりしておられました。
今回のワークショップで、和紙のおもしろさや多様性にも気づいていただけたらいいなぁと思っています。コロナ禍で、なかなか対面でのワークショップができませんでしたが、お子さんたちの反応を直接感じ、笑顔を見ることができると、本当に励みになるなと言うことを実感します。今年の対面ワークショップはこれが最後になりますが、12月3日にはオンラインで恒例の好評企画「今さら聞けない神社のお話」があります。ご期待くださいませ。
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