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1120日、「漆器の魅力」をテーマにしたオンラインセッションを開催いたしました。講師は、彬子女王殿下が「変態漆作家」と称される彦十蒔絵の若宮隆志さん。司会は、心游舎理事のモミゾーこと小山良磨さんです。

始めは、漆の歴史のお話から。縄文時代から漆は使われていましたが、約6000年前に作られた漆塗りの櫛が出土しています。福井県の鳥浜貝塚で出土した櫛は、弁柄を混ぜて赤色に塗られています。これは、シャーマンが結った髪に挿し、祭祀に使われたと考えられています。神と通じるのは、鏡や刀など光っていることが重要とされており、髪(かみ)に挿す漆塗りのきらきらした櫛が神(かみ)に通じると考えられたからなのだそうです。

漆は、漆の木の表面に傷をつけたときににじみ出てくる樹液です。傷ができたときに、木はその傷を治そうと樹液を出し、かさぶたのように表面を守ろうとします。人間の体でいえば、血液のようなもの。樹齢20年ほどの漆の木を掻くと、牛乳瓶1本ほどの漆が採取できます。採取の仕方には、採取したら切り倒してしまう殺し掻きと、木を枯らさないように少なめに掻く養生掻きがあります。彬子さまは、初めて漆の畑に行ったとき、痛々しい傷をつけられた漆の木を見て、心が重くなったそうですが、若宮さんによると、漆は人間と共生しないと生きていけない植物。樹液を提供する代わりに、切り倒してもらい、その根からひこばえを生やして、子孫を残していくのだそうです。縄文時代から、人間と上手に付き合いながら生きてきた植物なのですね。

彬子さまは、漆器でご飯を食べることの大切さをよくお話になります。今は、茶碗でご飯を食べることに疑問を抱かない人が多いですが、茶碗は本来お茶を飲むための器。ご飯は、飯椀で食べるものです。注目すべきは、茶碗の碗は石偏で、飯椀の椀は木偏であること。熱くても、三口で飲んでしまうお茶は、熱伝導率の高い陶磁器に入れると、すぐ熱が冷め、口元にくるころには適温になります。ご飯は、食事の最後まであたたかいまま頂きたいものですので、熱伝導率が低く、蓋をすることでさらに保温性が高まる木製の漆器で頂くのが本来の形なのです。漆器でご飯を頂くと、余分な水分を吸ってくれますし、口当たりもよく、本当にあたたかいままおいしくご飯が頂けます。漆器は高いと思われる方も多いかもしれませんが、直しながら使える一生もの。ぜひ漆器でご飯を食べてみてくださいね。

最後には、変態漆作家を象徴するような、若宮さんの作品紹介。漆は白色を出すのが難しいので、卵の殻を使って白を表現します。漆のお椀と刷毛を持ったドラえもんの白い部分は、うずらの卵の殻を丁寧に貼っていますが、白いうずらの卵は1パックの中になかなか多くは入っていません。白い卵の殻を集めるために、コレステロール値が上がるくらいのうずらの卵を食べておられるそうです。四次元ポケットの中には、漆器でできたタケコプターとどら焼きが入っているそうですよ。

心游舎ではこの度、若宮さんにお願いし、心游舎のロゴマークが入った飯椀を限定で製作していただきました。11月末より販売を開始いたしますので、ご興味のある方はぜひお買い求めくださいませ。

次回のオンラインセッションは、125日。心游舎神職理事による「今さら聞けない神社のお話―初詣の作法編―」です。拍手の仕方、手水の作法など、知っているようできちんとはわかっていなかったりすることがありませんか?会員以外の方もご覧いただけますので、ぜひ奮ってご参加ください。

※写真の無断転載は固くお断りいたします。