10月15日、ご好評をいただいておりますお茶セッションの第5回となる「日本茶のすゝめ 秋の茶会」を開催いたしました。パネリストは、いつもの通り万の徳淵卓さん、一茶庵宗家嫡承の佃梓央さん、En tea主宰の丸若裕俊さんです。今回は、事前に収録したお茶会の映像を見ながら、その解説をするという異色のセッション。直前の打ち合わせでも、初めての試みのため、どんな感じになるか皆想像がつかず、それぞれ不安を抱えながらのセッションスタートとなりました。
お茶会の始まりは、柿と栗の絵。なんだろうと思っていると、御亭主である佃さんがが駕籠を持って登場。柿と栗が落ちてくるような秋の季節なので、皆で里山をピクニックをしましょうということになります。佃さんしか全体のストーリーをわかっている人がいないので、なんとなく残りの3人は落ち着かない表情をしていることに注目です。佃さんが持っている籠にはお茶セットが入っており、徳淵さんと丸若さんがそれぞれ持参されたお茶を籠に仕込みます。彬子女王殿下の御菓子は籠に入らないので、とりあえずお膝の上に。でも、結局お茶を飲む段になって、邪魔になり、結局佃さんが預かられることになったのですが、だったら最初から預かってもらえばよかったですよね、という後日談でまた盛り上がりました。
里山を分け入ったところで、今度は沢蟹の掛け軸にお軸が変わります。沢蟹のいる川べりで道具を広げてお茶をするという設定です。ここでお茶とお菓子をいただきながら、蟹についての話しが進みます。蟹は横にしか歩かないので、変わり者の代名詞ですが、権力に反して我が道を行くと言うことで、「横行君子」として文人が好むモチーフとなりました。「あ、我々三人が変わり者と言う意味?」と気付く客側に対し、「その3人に私が入っていないというのが、私の性格が悪いところですよね~」と笑う佃さんのしたり顔も見所です。
最初は徳淵ブレンドのイチジクと黒文字のお茶。秋の味覚が口いっぱいに広がります。次は丸若さんの持ってきた高知の野草茶である「桃山トゥルシー」を。色も香りもガラッと変わり、野草の風味で一気にピクニック感が増しました。ここで猿のお菓子が出てきます。香ばしく焦がした甘栗を包んだおさるの頭とお尻のお菓子。一口でぱくっと頂けるのですが、なんだかちょっぴり罪悪感があります。
何故、猿のお菓子なのかというと、最初に出てきたのが「柿と栗」、そして次のお軸の「蟹」と「猿」。実は「さるかに合戦」の世界だったのです!お菓子が入っていたのは、おむすびの箱だというところにも注目です。
悪い猿に殺される蟹と、殺された蟹の子供たちによる仇討ちの話。掛け軸では蟹がたくさんいますから、掛け軸の中の蟹は、殺された蟹の子供たち。猿に仇討ちする子どもたちだったのです。
最後のお軸は、仇討ち仲間の臼と杵です。芥川龍之介に「さるかに合戦」の短編小説があります。仇討ちを終えた蟹の子供たちや仇討ちに加わったメンバーの後日談ですが、全員逮捕され、裁判にかけられるというものです。ちょっとシニカルな結末も見据え、御菓子の中の栗は焦がして苦みを出してありました。栗を包んでありましたので、栗はお腹の中から猿を攻撃していたことに。その猿を頭とお尻に分けて、食べてしまった私たちが一番罪深かったかも。。。と言うお話で終了しました。
一茶庵のお茶会は独特ですが、そんな世界を少し垣間見て頂ける機会になったのではないかと思います。次回のお茶会は、皆さんにも参加していただけたらいいな。。。と願っております。
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