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5月15日、3年目となります人気企画「日本茶のすゝめ」シリーズ、「第1回取り合わせ選手権」を開催いたしました。パネリストはいつもの通り、福岡の「万」店主の徳淵卓さん、一茶庵宗家嫡承の佃梓央さん、司会はEn teaの丸若裕俊さんです。開始早々、なぜかニヤニヤが止まらないパネリストの皆さん。丸若さんが開始前のリハーサルの時間を忘れていて、ほとんど打ち合わせをすることができず、ほぼぶっつけ本番。それなのに、しっかり見たこともない衣装にお着換えの上、真面目な顔をして司会を始めた丸若さんに笑ってしまったのだそうです。このメンバーが集まって、何も事件が起こらなかったことがないので、いつも通りの安定のスタートとなりました。
今回のテーマは取り合わせ。今までお茶の飲み方や淹れ方などのお話をしてきましたが、応用編と言うことで、何と取り合わせたらおいしく頂けるかをそれぞれの観点からお話するということになりました。
エントリーナンバー1は、徳淵さん。ご家庭でもできる簡単な取り合わせ、おすすめのブレンドについて教えてくださいました。茶器を温め、新茶とちぎった木の芽を入れ、熱いお湯を注ぎます。木の芽のさわやかな香りが鼻に抜ける、初夏らしい味わいになるそうです。バジルも同じようにして淹れるとおいしいとのこと。西洋のハーブとお茶は合わないだろうという先入観は捨てて、気軽にハーブティを楽しんで欲しいと徳淵さん。徳淵ブレンドの山椒カモミールやレモングラスのお茶もおいしいですし、お茶漬けにするととてもおしゃれな味がします。
ナンバー2の佃さんは、お軸との取り合わせ。百花の王と言われている牡丹が竹籠に生けられた掛け軸を出してくださいました。科挙の合格者は、探花(たんか)宴と呼ばれる、牡丹の花の中で行われる宴会に招かれ、祝うそうですが、三番目の成績で合格した人は「探花」といい、美しく咲いた牡丹を探してくる役目を担うのだそうです。お軸に描かれた牡丹を見ながらお茶を飲み、来年こそは合格できたらいいなと願うひととき。奥にある蕾の赤い牡丹には、これから咲くという思いが込められているのでしょうか。
ここで徳淵さんが「金傍題名」と書かれた杯を持ってこられました。意味は、トップ合格者が掲示される「金傍」に「名前が載る」で、そうなりたいという祈念が込められた杯。泉屋博古館に本歌がありますが、これは永楽の写し。牡丹は富貴を意味するとてもおめでたい花ですが、みんなが富貴になって、社会が豊かになり、皆が幸せになりますようにという願いが込められているのだそうです。コロナ禍や戦争など、落ち着かない世の中ですが、みんなが大輪の牡丹のように、豊かに生きられるといいですね。
ナンバー3の彬子女王殿下は、和菓子との取り合わせ。日曜日なので、お休みの和菓子屋さんが多く、「困ったときの虎屋」で、虎屋のお菓子の御紹介でした。和菓子は、季節を先取りで頂き、もうすぐこの時期かと感じるものでもありますが、15日当日は賀茂祭(葵祭)の日。上賀茂神社と下鴨神社では、昨年、一昨年に引き続き、路頭の儀(行列)はありませんでしたが、祭儀は各社で行われました。彬子さまも上賀茂でのお祭りに参列されており、せっかくなので葵祭にちなんだお菓子をということで注文された「車」の薯蕷饅頭と賀茂祭のお下がりの葵の和菓子を取り合わせられました。車は、昭和63年の歌会始の勅題「車」に合わせて作られたもので、源氏物語の賀茂祭見物の車争いの牛車の車輪を表わしたものです。
最後の丸若さんはお茶漬け。すっぽんの出汁と山椒で炊いた松の葉昆布をご飯に載せ、紅茶を焙じた紅焙じ茶をかけて頂きます。紅茶をご飯にかけると言うのはあまり発想にないと思いますが、意外な取りあわせでとてもおいしいのです。
結局第一回取り合わせ選手権と言いながら、誰もジャッジする人はいなかったというゆるい結末。3回オンラインでやってきましたが、次は時差なく、同じ空間で同じお茶を味わいたいですねというお話に。秋頃に、対面のお茶会をしましょう!という話でまとまりました。
終了後の反省会では、徳淵さんの山椒のお話を植物で受けたかったので、牡丹のお軸にしたと佃さん。そこから彬子さまの葵につながり、丸若さんの山椒の昆布できれいに一周できる美しい流れであったということに気付いた皆さん。「初めに打ち合わせできてたら、絶対この話できてたはずなんですよ!」と悔しがる真面目担当の徳淵さん。結局何か足りないまま終わってしまうのも、このメンバーらしさのような気がします。
次回のオンラインセッションは、6月25日の太鼓です。江戸らしいお話をぜひ楽しみにしていらしてください。

 

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