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今年もいよいよあと二日となりました。皆様にとってどのような1年だったでしょうか。「コロナ禍」と言われるようになって、はや三年が経過しようとしています。様々なことが制限され、心游舎でもオンラインが中心の活動が続きましたが、オンラインの活動を通して心游舎を知り、会員になってくださった方たちも多くおられますし、海外から参加してくださる方たちもできました。心游舎にとっては、コロナ禍は新たな一歩を踏み出すきっかけとなったような気がしております。
今年はオンラインに加え、少しずつ対面のワークショップを再開することができ、講師の先生方の熱量を直接参加者の皆さんに伝えることのできる喜び、そして参加者の方たちのうれしそうな笑顔を間近で見られることの喜びを実感できる1年となりました。来年もまた、オンラインと対面を併用しながら、様々なワークショップを企画していく予定です。様々な形で今年も心游舎を御支えくださった多くの皆様に心よりの御礼を申し上げますとともに、来年も変わらぬご厚情を頂けますよう、お願い申し上げます。
今年最後のコラムは、年の締めくくりにふさわしい年越しそばのお話を上賀茂神社権禰宜のトロンボーヤこと米山裕貴さんが書いてくださいました。明日はおいしいお蕎麦を頂いて、気持ちよく新しい年を迎えたいですね。
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年末最後の晩餐
今年1年はいかがだったでしょうか。去年も同じことをコラムで書き、今年も本当にあっという間の1年だったなと思います。今年もまだコロナ禍の状況ではありましたが、昨年と異なり「3年振りに開催」という言葉をよく聞くことからもわかるように、少しずつウィズコロナ、世の中も動き出しているようにも感じます。今回は年末の食べ物をピックアップして、日本人特有の最後の晩餐?を紹介したいと思います。
日本人が年末に食べる物としてある食べ物が多いのではないでしょうか。それは「年越しそば」です。私も学生時代、実家で暮らしている時は、家族でそばを打って家族で食べて元旦を迎えた後、神社へお参りをすることが年越しのルーティンのようになっていました。1年の最後に食べたいものと聞くと、贅沢し、好きなものを食べたくなりますが、日本人特有の年末最後の晩餐「年越しそば」を食べる文化の経緯や意味を書かせていただきます。
大晦日に年越しそばを食べる習慣は、古くは鎌倉時代。鎌倉時代の博多の貿易商・謝国明にあるようです。謝国明は、博多の町で飢饉と疫病が流行した年の瀬、福岡市博多区にある臨済宗東福寺派の寺院、承天寺に人々を集め、貧しい町人に「世直しそば」と称してそば粉でできた餅を振る舞いました。その翌年から、そば餅を食べた人々の運気が向いてきたことからそば餅を食べたら良いことがあるという噂が広がり、運を開ける食べ物ということでそれから毎年「運気そば」として大晦日にそばを食べる慣わしが生まれ、江戸時代には庶民の間に定着し、現代に至り、「年越しそば」という今の呼び名が全国的に広まったのは明治以降と言われております。
また「そば」ということにも意味があり、そばは雨風にさらされても、太陽の光を浴びればまた元気によく立ち直る打たれ強い植物であることから七転び八起といった「打たれ強さ」。またそばは切れやすいことから「悪縁や災厄を断ち切る」、長く伸びることから「寿命・身体・家運を伸ばす」、そばという名前から「そば」と「側」とを掛けて、1年の締めくくりでもある大晦日に家族でそばを食卓に囲むことから「来年もそばにいよう」等の願いを込めて食べられていたそうです。また江戸時代に著された『本朝食鑑』には「蕎麦は気を降ろし腸を寛し能く腸胃の滓穢積滞を練る」と記載され、新陳代謝により体内を清浄にして新年を迎えるという効能説もあり、実際にそばにはアレルギーによる重篤な症状を起こす場合もあり、注意が必要ですが、毛細血管を強く丈夫にし、動脈硬化を予防する効果があるというルチンや、殺菌効果や抗酸化力が高いカテキンも多く含まれ、その他にも豊富な栄養素が含まれていて、美容と健康にも良い食べ物でもあります。このように歴史的、身体的にも理由があり、「年越しそば」を食べる文化が生まれていったと思われます。
また、この「年越しそば」に入れる具材にも様々な意味があると言われています。まず1つ目「海老」はその姿が腰の曲がった老人を連想させることから長寿のシンボルとして縁起の良い食べ物。同じく2つ目は「油揚げ」。「油揚げ」は稲荷神の使いである狐の好物とされることから「狐揚げ」とも言われ、縁起の良い食べ物ともされていて、稲荷神社へのお供え物としてもよく知られています。3つ目は「にしん」。「にしん」はお正月の定番でもある数の子の親です。多くの子が生まれるようにと「子孫繁栄」を願われた食べ物。4つ目は「卵」。「卵」の黄身の色が黄色であることから黄金を連想し、「商売繁盛」の御利益がある食べ物。5つ目は「ねぎ」。神職の役職名として同じ発音の「禰宜」という言葉があることから祓い清める意味やねぎこと(願いこと)を込められた食べ物。また、疲れをねぎらうということで、1年間頑張ってきたことをねぎらい、来年の幸せを祈ってとも言われております。この「ねぎ」に関しては体を温め、免疫を高めてくれる作用が期待出来ることから風邪予防、冬にはぴったりの食べ物とも言われています。
鎌倉時代から「年越しそば」の文化の形は変わっても、現在にも継承され、令和に生きる私達に「年越しそば」は周知されております。それは時代・環境が変わっても、「年越しそば」の文化が大事に継承され、日本人にとって必要不可欠の食べ物であったからとも思います。年末最後の晩餐、贅沢をしたい気持ちもわかりますが、このコラムを読み「年越しそば」意味の理解をいただくと去年とは違った年越しをお過ごしいただけるのではないかと考えます。ぜひパワーアップをした「年越しそば」をご賞味下さい。