東北などでは、大雨の被害が出ていると言うことで、被害を受けられた皆様にお見舞い申し上げます。夏の雨は、「瑞雨」「喜雨」「慈雨」など、からからに乾いた大地や草木にうるおいをもたらす、恵みの雨というニュアンスの言葉が多いように思います。台風が発生しているというニュースもありますが、恵みの雨となることを祈っています。
今回のコラムは、心游舎理事の倉嶋慶秀さん。お坊さんによるお盆のお話、とても勉強になりますね。
【お盆について】
8月に入ると帰省ラッシュのニュースが多くなります。新幹線や飛行機の乗車率や高速道路の渋滞予想など。8月のお盆は、昔から日本人が大切にしてきた宗教行事の一つであると思います。
そこで今回は、仏教の視点から、お盆について触れたいと思います。(諸説ありますので、一般的に知られている内容を記します。)
お盆の正式名称は、盂蘭盆会(うらぼんえ)と言われております。
「盂蘭盆会(うらぼんえ)」とは、インドで昔に使われていた言語であるサンスクリット語の「ウラバンナ」を漢字で音写したものといわれ、「逆さまに吊り下げられるような苦しみ」という意味を持っています。
その由来は、お釈迦様の弟子、目連尊者(もくれんそんじゃ)があるときに神通力を使って、母親が餓鬼道で逆さに吊されて苦しんでいることを知りました。
そこで、母親を救う為にどのようにしたら良いか、お釈迦様に相談したところ、自分の力を母親にだけに使うのではなく、同じ苦しみを持つ全ての人を救う慈悲の心を持ち、僧侶に読経をしてもらい、食事など様々な施しをすることが大切であると諭されたのです。
そして目連尊者は、夏に僧侶が集まって修行する期間を終える最後の日(7月15日)に、お釈迦様の教えを実践したところ、その功徳によって、母親は、極楽往生を遂げることができ救うことができたそうです。
この教えは、「生命の歴史は深く、命のつながりであり、全てのご縁に感謝し、その縁によって私たちは生きることが出来ている。このことに気づくことが大事であり、有縁無縁関係なく全ての人々や物事に感謝をすることの大切さ」を説いていると考えます。
お盆の期間は、地域によって違いがあります。明治以前は、7月でしたが明治6年に改暦が行われたことにより、8月に行う地方が多くなりましたが、東京近郊や沖縄は現在も7月に行っているようです。また、地域によっては、3日間の場所もあるようです。
では、お盆にどのようなことを行うのかをまとめます。ここでは一般的なお盆の過ごし方を記します。地域や宗派によって行い方や精霊棚(盆棚)の飾り方は違いがありますので、詳しくは、地域の寺院におたずねいただくと良いかと思います。
まず、迎え盆に行く前に、精霊棚を設えます。精霊棚は、ご先祖様をお迎えし、お盆期間中にお帰りになる場所となりますので、ゴザなどを敷き、御位牌を並べ、香炉や供花、故人が好んだ物などを供えます。
四隅に笹竹を立て、縄を結び、ホオズキなどを吊します。これが結界になるとなります。
有名なのは、胡瓜や茄子にオガラをさして、胡瓜を「馬」に、茄子を「牛」に、見立てます。迎え盆には、胡瓜の馬に乗り少しでも早く家に帰ってきてもらい、送り盆には、茄子の牛でゆっくり帰ってもらう意味だとも言われています。
8月13日
菩提寺や墓地にお参りをして、ご先祖様をお迎えに行きます。地域によっては、迎え火を焚いたり、盆提灯を持っていったりします。
8月14日・15日
お帰りになっているご先祖様に、お供え物をします。また、僧侶を自宅に招き、法要を行うこともあります。
8月16日
ご先祖様を送りに、菩提寺や墓地にお参りをします。そして、地域によっては、送り火を焚きます。有名なのは、京都の五山送り火があります。
私が住む地域では、農業や養蚕が盛んだったため、日中は仕事をして、夕方、親族が集まり、お風呂に入って身体を清めて、親族全員で迎え盆をするという風習がありました。その中には、浴衣に着替えておめかしした、可愛い子どもたちも沢山いました。
家族それぞれが、本堂にお参りをして盆提灯に火を灯す。その後に墓地にお参りをしてご先祖様を連れて帰る。お孫さんが、墓地で人を背負う格好をして、「おじいちゃん、おばあちゃん、背中に乗って帰るよっ。」と声をかけて。盆提灯を持った家主の後をついて行く。暗闇の中、無数の盆提灯がゆらゆらと各家庭に帰って行く姿は、とても幻想的な風景を演出し、本当にご先祖様が目の前に帰って来られているように感じる時間でした。
今は、段々とその風習もなくなりつつありますが、目に見えない物に感謝をし、有り難さを感じ、ご先祖様をお盆にお迎えするという、日本人らしい心のこもった行事であると思います。お盆の4日間を、是非、家族団欒の時間として昔話に花を咲かせ、未来ついて語り合い、家族の絆を深める大切な時をお過ごしいただければと思います。