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新年度となり、本日で心游舎は創立10周年の佳き日を迎えることができました。東京のホテルのレストランに毎月集まり、わいわいとご飯を食べながら、サークル活動のように、みんなで一つ一つの企画を考え、一つずつ実行していくという形で、初期の心游舎は始まりました。よくもまあ、あんなに急ごしらえの組織で、大きな問題も起きずに進んでこられたものだと思いますが、創設メンバーを始め、賛同者や歴代理事の皆さん、そして会員の皆さんがあたたかくお支えくださったおかげと、感謝の気持ちでいっぱいです。次の20周年、30周年に向け、心游舎一同皆で力を合わせて、一歩ずつ歩みを進めていきたいと思っておりますので、これからも変わらぬご支援を頂けましたら幸いです。
今日のコラムは、心游舎理事で太宰府天満宮宮司の西高辻信宏さんが、4月9、10日に太宰府天満宮で行われる10周年記念事業のことを書いてくださいました。心游舎を創設する前に、総裁である彬子女王殿下が相談されていたという亡き中村勘三郎丈のご子息、中村勘九郎丈と七之助丈による公演が、同じく創設前からご支援くださっていた太宰府天満宮の地で開催されますことは、本当にありがたきご縁です。雨が降らないことを祈りながら、当日の公演、ワークショップを皆で心待ちにしております。
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天神様と歌舞伎
この春、心游舎創立10周年の記念事業として「平成中村座奉納特別公演」が、菅原道真公(天神様)の永遠に鎮まる太宰府天満宮において開催される運びとなりました。大変有難く、心から楽しみにしているところです。
道真公と歌舞伎と聞いて、まず脳裏に浮かぶのは『菅原伝授手習鑑』ではないでしょうか。江戸時代中期に初演されたこの演目は、道真公(菅丞相)のご生涯を骨子に、道真公に仕える白太夫の三つ子の兄弟等が活躍する物語です。舞台は平安時代。人々にとっては約850年前の歴史を扱った時代劇でありながら、当時大阪で生まれて話題となった三つ子の誕生を絡めたり、最新の世相や情景描写が盛り込まれ、大いに好評を博しました。今でも『仮名手本忠臣蔵』・『義経千本桜』と並び、義太夫狂言の三大名作の一つとして知られています。
この時期は武士のみならず市井や農村に暮らす人々まで「読み・書き・そろばん」の必要性が高まり、全国各地に民間の教育機関といえる寺子屋が設けられました。道真公は書道の神様・手習いの神様として篤く崇敬を集め、寺子屋では天神様の肖像画が掛けられ、子供たちが日々使用する机は「天神机」と呼ばれるなど、広く深く親しまれる存在であられたことが覗えます。寺子屋の普及もあって、当時の日本の識字率は世界屈指の高さを誇っていたようです。『菅原伝授手習鑑』の中で「寺子屋の段」は物語のクライマックスであり、現在に至るまで繰り返し上演され、当時の人々の道真公への想いや、天神信仰が庶民にまで息づいた証を、今を生きる私たちに伝えてくれています。
今回の奉納公演に先駆けて、9日には子供たちを対象とした中村座の皆様による心游舎ワークショップがございます。日本の素晴らしい伝統文化に触れる素晴らしい「学び」の場となることを願っています。