オンラインショップ

会員ページ

昨日はひな祭りで、街の和菓子屋さんはにぎやかでしたが、雛飾りをされたり、桜餅を食べたりされたでしょうか。
今回のコラムは、心游舎理事の森川太郎さんです。商社を経営しておられ、鉄も扱われる森川さんの鉄のお話。心游舎でも、2月の厳寒の出雲でたたら製鉄を見に行く旅を企画したことがありますが、「神事のようだった」とか「厳かで目が離せなかった」など、皆さん一様に感激してお帰りになります。砂鉄と木炭と火が玉鋼を生み出すわけですが、今の製鉄所で作られる鉄も同じ原理で作られます。でも、たたらで作った玉鋼でなければ、刀剣の美しい刃文は出ないのだそうです。現代の科学をもってしても解明できない人知を超えた力というのがあるのでしょうね。
______
鉄は国家なり。。。
かつてドイツのビスマルク首相が言ったそうです。日本でも近代製鉄では有名な八幡製鐵所から始まって国家事業として鉄の生産はどんどん成長し、いつしか日本製鉄(旧新日本製鉄)は世界でNo1の生産量を誇ったこともありました。残念ながら現在日本全体の製鉄粗鋼生産量は中国のそれと比べて1/10ほどとなっていますが、環境を意識した製鉄と軽くて強い製鉄に関する技術は群を抜いて高く、世界をリードしていると言えます。
現代は鉄鉱石や石炭等を原料として造られる高炉製法、鉄屑(スクラップ)を溶かして再生する電炉製法と大きく2つに分類され、高炉は非常に広大な敷地が必要で、構内を専用タクシーが走ってたり鉄道レールが敷かれてたりする工場も存在します。
そんな鉄はなんと紀元前から存在し、貴重なものでした。国内でも近代製鉄が生まれるまでは古代より製鉄されていて、中世以降はもののけ姫でも有名な「たたら」と言われる鉄鉱石や砂鉄から造られる製鉄法が盛んになり、武器や農機具等あらゆるものに使われてきました。
たたらという言葉の語源はさまざま諸説ありますが、主に製鉄の炉の中に風を吹き込むための鞴(ふいご)と言われる、もののけ姫で女性たちが足で踏んでいた踏み板の装置を差していいます。銑押し(くずおし)や鉧押し(けらおし)と言われる製法をもつたたらは、日本の製鉄において多くの活躍をするも、一旦は近代化や需要の影響で失伝しました。ですが今でも島根県奥出雲では日立金属さん達の協力もあり、「日刀保たたら」としてその伝統と製法を復活させて守られています。そこで造られた鋼のもとを玉鋼といい、現代でも日本刀の原材料となっております。
昨年、心游舎では彬子女王 殿下がお選びになられた玉鋼を、新設された熱田神宮草薙館で奉納するため、刀剣の鍛錬に参加させていただき、とても貴重な体験をさせていただきました。
私は本業として、鉄に関わる仕事をしておりますが、昔も今も不変でありながら生活に根付いているにも関わらず何気に注目されないこの鉄ってものに何故か愛着を感じています。