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熱海を始め、日本各地での大雨のニュースに胸が痛みます。被害に遭われた皆様にくれぐれもお見舞いを申し上げますとともに、西日本や九州では週末にかけて大雨が予想されるそうです。どうぞ皆様お体お大切にお過ごしくださいませ。

今回のコラムは、太宰府天満宮権禰宜の真木智也さんが書いてくださいました。太宰府天満宮といえば、梅。菅原道真公が愛された梅が、境内にはたくさん植わっていますが、太宰府天満宮では毎年梅雨の雨を避けるようにして梅の実を摘み、塩漬けにして、梅干しを漬けられます。梅雨が明けた暑い土用の頃に、梅を干します。少ししょっぱめの昔ながらの梅干し。真木さんも大好物だそうです。

梅干しに含まれるクエン酸が細菌の増殖を抑えるため、食中毒予防にも効果的です。疲労回復、食欲増進、胃腸の働きを助ける効果もあるので、夏バテ知らず。暑くなってきて、食欲がないときでも、梅の味のご飯やそうめんなどは、意外と頂けますよね。梅干しを効果的に取って、暑い夏に備えましょう。

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日本人の根源

「米を知ること」

本年も太宰府天満宮におきましては、5月1日に御本殿にて斎田(さいでん)播種(はしゅ)祭を斎行し、6月12日にはその種籾より育った苗を斎田に植え、稲穂が荒天や害虫などの被害にあわず、実りの秋を迎えて無事に収穫されるようにとの願いを込めて、御田植祭を斎行致しました。7月は、子どもだった苗がどんどん成長して、茎を増やして大人の稲に育つ時期。

今回のコラムは、「米を知ること」をテーマにお届けしたいと存じます。

なぜ、米についてお話をするのかというと、それは日本という国が米により形成された国だからです。そして、私たち日本人一人ひとりも米文化によって形成された人間であるからです。

日本の神話や古い歴史を記した『古事記』『日本書記』によれば、稲をはじめ五穀は、神が生み成されたものと語られています。私たちの主食である米は、天孫ニニギノミコトが、豊葦原中津国と呼ばれていた日本の国土を治めるため、高天原から天降られる時に皇祖アマテラスオオミカミからいただいたものと伝えられています。その時、アマテラスオオミカミは、稲を作り、神祭りを行うようにといわれたのでした。このように、稲の歴史は、神話の世界まで遡ります。それより米は、われわれ日本人になくてはならない主食として定着し、生活の中心として捉えられながら、今日あるような日本の食文化を形作ってきました。その「米を知ること」に、日本人、ひいては自分自身を知るきっかけが隠されているのです。

米は、それ自身が主食としてエネルギー源となるだけでなく、併せて他の食品を摂るという食文化を育みました。

米のお伴といって、真っ先に思いつく食品は何でしょう。私の場合は、梅干です。梅干に含まれるクエン酸が、さらに米のエネルギー効率を上げることからも、理に叶った組み合わせといえます。この他にもたくさんの組み合わせが思いつくことと思います。

必ず何か他の食品を伴うことで、食卓を支えてきた米。そのことが、繊細・複雑で多様な日本文化の原点にもなっているといえます。つまり、米は人々の身体も心も豊かにしてくれるものであったのです。しかし、逆の面もあります。稲作が始まる前の日本人は、貝やどんぐり、しいの実など、その日その日に採れるものを食べて暮らしていました。栄養学的には貧しい食事だったかもしれませんが、当時は、すべての人がいわばその日暮らしだったわけで、貧富の差も当然ない、平和な時代だったのです。

ところが、長期保存のできる米が歴史に登場してからは、様子が変わりました。米を多く持つ者、持てない者の差が生じ、それが人の心情を揺るがし、時には戦にまで発展することもありました。

今日の日本の歴史は、米が作り出した人間の身体、感情、あるいは文化や社会構造などが大きく関わって成り立っているものです。突き詰めれば、その歴史の延長にいる私たちは、米によって作り上げられたといっても過言ではないのです。米に例えて話をしましたが、本題は私たち人間の話です。今自分が、あるいは他の人がそこに存在していることの背景や意味を知り、それを尊ぶことこそ、人と人の進むべき全ての道に通ずる出発点であるのではないでしょうか。

神棚のお供え物には、まず第一に米が用意されます。米にこそ、私たち日本人一人ひとりの根源があるからなのかもしれません。