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三寒四温の毎日ですね。気温差に体がついていかず、体調を崩される方も多いようです。東北の地震に引き続き、寒波も来ていて、大変な思いをしておられる方も多いのではないかと思います。なかなか帰省もままならない落ち着かない毎日ですが、少しでも穏やかな気持ちで日々を過ごせますようにと祈るばかりです。

2月18日は二十四節気の雨水でした。寒さが緩み、雪や氷が解け始め、雪が雨に変わることを意味する節気です。この頃から農地に水が浸み込み、農耕の準備を始める目安とされていました。厳しく寒い冬の時期が終わり、春は着実に近づいていることを感じる今日この頃。新型コロナウィルスの感染者も少しずつ減り、ワクチンの接種も始まって、こちらでも春の兆しを感じられるようになるでしょうか。

今回のコラムは、黒田装束店の黒田基起さんです。有職装束は、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、黒田さんはいつも身近にあるものに引き付けてお話をしてくださるので、とてもわかりやすくて好評です。無駄な知識など何一つありません。多くの知識を身に着けた有識者になりたいものですね。
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有職故実とは

「有職故実」という言葉を耳にしたことがありますでしょうか。

これは平安時代の宮中の生活を送る上で不可欠な知識のことです。具体的には平安時代から伝わる公家及び武家の儀式行事上の法式のことを指します。

装束司はこの「有職故実」を理解しておかなければなりません。そうでなければ、平安の時代から令和まで続いてきた伝統文化を失ってしまうのです。

「有職故実」の「有職」という言葉は平安の昔においては「職」の字は「識」の字を用いておりました。

昨今、有識者会議という言葉をニュースで聞くことがあったかと思います。つまり「有職(識)」は博識な人の事を指します。源氏物語でも少女の巻に夕霧の学才があることを「誠に天の下並ぶ人なき、いうそく(有職)には物せらるめれど」と書かれており、その意味で使われていることがわかります。

「故実」とは古の事実という意味で、つまり「有職故実」とは平安時代から伝わる様々な儀式や儀礼における立ち居振る舞いや装束、調度品などの知識のことを意味します。

この有職故実という概念は平安初期から公家社会を中心に存在し、その知識を有することが権威とされることもありました。

一度は武士により、知識・文献・物品類などの多くを失ってしまいますが、近世に入って、有職故実は復興への道を辿り、「学」としての知識体系が整備されていき、現代に至ります。

そのような長い歴史を持つ「有職故実」という知識を学ぶには多くの学問の分野に属しています。例えば、殿舎は建築史に、調度や武具や神輿等は歴史考古学に、服飾は服飾史に、年中行事や典礼は民俗学に古文書学などに属し、広範囲の分野を研究することが必要となります。

私自身も装束という分野だけでなく、有職故実を通し、様々な学問を学んでいきたいと思います。