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まだまだ風が冷たく、寒い日が続きますが、暦の上では春。立春を迎えました。

京都の和菓子屋さんは、節分や立春、初午をモチーフにした様々なお菓子をこの時期出されます。鬼やお多福、お稲荷さんのきつね、梅に鶯など、春の訪れを感じさせる和菓子が店頭に並び、見ているだけでなんだか気持ちがうきうきとします。今年はご自宅で過ごされる方が多いせいか、随分と繁盛しているお店も多く、売り切れになっているところもあったようです。

和菓子と言えば、合わせたくなるのがお抹茶。お稽古のときに和菓子が頂けるのが楽しみで、茶道部に入っていたという人もよく聞きます。でも、お茶のお稽古を日常的にしていらっしゃる方でも、「ご自宅でお茶を点てて飲まれますか?」とうかがうと、「飲む」という方は意外と少ないのです。

お抹茶は、飲み終わった後のお茶殻を始末しなくていいので、実は緑茶やほうじ茶を入れるより簡単です。ポットからお湯をそのままお茶碗に注いで、茶筅をカシャカシャ振ればあっという間に出来上がり。後片付けも楽で、忙しい朝にもぴったりですし、気持ちがしゃきっとして目覚めます。お道具を揃えないと。。。とか、心得がなくて。。。と気負われる方も多いですが、おいしくお抹茶をいただくということが何よりも大切。ぜひ日々の生活にお抹茶を飲むことを取り入れてみてはいかがでしょうか。お茶の成分には、抗菌・抗ウィルス効果があり、免疫力アップにもつながると注目されているようですよ。

さて、今回のコラムは、心游舎理事のモミゾーこと小山良磨さんが、経営されている幼稚園での茶道教育のことを書いてくださいました。子どもたちの楽しみは、やはり和菓子でしょうか。和菓子を通して季節の移り変わりを知るというのも、とても素敵なことですよね。
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茶道と日本の挨拶

全世界の心游舎ファンの皆様ご機嫌よろしゅうございます。
今年もよろしくお願いします。

さて、新しい年を迎え、私の勤務する幼稚園でも風物詩となっている一つがお茶の初釜席です。昨年の春からお稽古してきた子どもたちもこの時期になると一つ一つの動きが単純な動作でなくそれぞれにきちんと気持ちや心が入った所作となり、とても美しく素敵な時間を作ってくれます。お茶の時間はいつもの幼稚園の時間とは違う時間。ご挨拶も違えば、先生たちはいつも「元気よく!」と言っているのにこの時間だけは「静かにしましょう」と。子どもたちは緊張感がありながらも日常生活の中でなかなか学ぶことのできなくなったことに興味津々。でも1番の興味は季節のお菓子でしょうか。

お茶の席というと「侘び・寂び」という言葉をよく耳にするかと思います。「侘び」とは置かれている状況が悪くても受け入れそれすら積極的に楽しむという精神性、また「寂び」とは古さや静けさ、枯れたものから趣が感じられるという内面にある本質が表面に現れる変化を美と捉えることと言えます。どちらも悠久の歴史の中で恵みをいただきながらも時に厳しい自然とともに生き、自然に神を宿し、自然に美を見出した日本人特有の精神性と概念と言えるのではないでしょうか。

そして室町時代中期以後に村田珠光、武野紹鴎、そして千利休によって大成されたのが「侘茶」です。

これに対し、「綺麗さび」という概念を確立したのが小堀遠州です。
江戸時代初期、徳川将軍家の茶道指南役として活躍した小堀遠州は、千利休や古田織部から茶道を学び、寛永文化の主導者のひとりとして、王朝文化の雅の心と茶道を融和させ、「綺麗さび」という幽玄・有心の独特の茶道体系をつくりあげました。

従来の「侘び・寂び」の精神に、美しさ、明るさ、豊かさを加えたのです。それにより誰からも美しいと言われる普遍的で客観性のある美の境地を作り上げたのが綺麗さびです。綺麗さびでは、茶室の空間もそれまでとは違い、光を取り入れた明るい茶室で客人をもてなします。この頃から扱われる茶器も見た目の美しいものへと変わっていきます。新たな美意識『綺麗さび』を持つ遠州流茶道は「武家茶道」と呼ばれ、公家や僧侶、大名の交際儀礼として必須の教養となり、もてなしの哲学をもつ総合芸術としての存在でありました。私どもの園でもお茶だけでなく総合芸術の時間として豊かな心を育んでいます。

茶道は茶器やその道具にはじまり、部屋のしつらえ、花瓶の花などあらゆるものに関わりを持っています。そのため豊かな教養や感性が自然と備わる環境でもあるのでしょう。
私たちも子どもたちに幅広い知識と美しいものを美しいと思える心、そして2度とないひと時をもてなす、ともに良い時間を過ごす心を持った「茶人」になりましょうと教えています。
その茶人への一歩はきちんとした挨拶であると思っています。

日本には多種多様な挨拶の言葉があります。「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」といった日常人と会った時の挨拶、「いただきます」「ごちそうさまでございました」といった感謝を述べる挨拶だけでなく「お寒くなってきました」といった季節を表す挨拶や「お体おいといくださいませ」といった相手を気遣う挨拶、日本の挨拶は相手に自分の気持ちを贈るということが原点になっていると考えます。

挨拶が心からきちんとできる子は自然に相手を思いやる心、自然を慈しむ心、故郷を思う心などどんなことにも敬意を払う心が育まれるといいます。
お茶の時間では「先生ご機嫌よろしゅうございます」から始まり、「お退屈様でございました」「ごちそうさまでございました」で終わります。

お菓子やお茶をいただくときも「お先に」「お相伴させていただきます」など
子どもたちだけでなく大人でもなかなかすることのなくなったご挨拶です。

日常ではご家庭でこのような場面は少なくなったと思いますが、お客様がお見えになった時、お茶菓子やお茶をお子様にお運びしてご挨拶していただくということをなさっても良いのではないでしょうか。一期一会の心を持っておもてなしをする。一言のご挨拶という本当に儚い時間の行為かもしれませんがそこには相手と温かい心が必ず通い合うからです。
なかなか気分の晴れない昨今だからこそ、気持ちの良い心のこもったご挨拶を交わして心を通わせてみませんか。

今回のコラム大変お退屈様でございました。