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全国的に寒い一日となりました。今日の京都の最高気温は2度。朝は、鴨川に氷が張り、神社の手水舎の水が竹の口からそのまま凍っている様子が見られました。外に出ると頭がキーンとするくらい寒いのですが、冬の朝らしい清々しさがあって、これはこれでよいものだなと思います。

新年1回目のコラムは、お正月らしい内容で。貝合わせと貝覆い「とも藤」の佐藤朋子さんに蛤のお話を書いていただきました。蛤は、一つとして同じ形のものはなく、対の殻しか合わないため、夫婦和合の象徴であり、おめでたい食べ物として、宮中のお正月でも蛤のお吸い物が必ず出るそうです。逆に、物事の結果や手順が食い違ったり、意味をなさなくなったりすることを、はまぐりを逆にして「ぐりはま」とか「ぐれはま」「ぐれはまぐり」というそうで、ここから道を外れてしまう「ぐれる」という言葉が生まれたとも言われています。

蛤がかちりと合う瞬間はとても気持ちがよく、なんだかとてもいいことがありそうな気持ちにさせてくれます。首都圏では緊急事態宣言が発出され、関西圏も追従するようです。ご自宅で過ごされる時間も長くなると思いますが、蛤で栄養補給、そして貝合わせを楽しんでみられるのも一興かもしれません。
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お正月の蛤のこと

新年、お正月の楽しみと言えば、おせち料理やお雑煮、京都では蛤のお吸い物も欠かせません。蛤がちりばめられた貝合わせの文様も新春を華やかに彩ります。

蛤は良縁、夫婦円満の縁起物ですから、お正月のおめでたい料理とされますが、明治の料理研究家、本山萩舟の「飲食事典」によりますと、平安時代に清少納言が老後を過ごしたとされる阿波(徳島県)の鳴門海峡のほとり、吉野川河口付近に橅養(むや)というところがあり、昔は全国から京に集まる蛤の選定に橅養産の蛤が標準になったといわれ、師走16日に川開きがあり、その日とれた物が最上とされ、京へ送り二条家から内裏の御用に供せられたと伝えられているそうです。

京の庶民は古くから公家や武家の方々との関わりが様々にあり、庶民の年中行事にもそういったことが影響していますので、京都のお正月に蛤のお吸い物を食べるのも、もしかするとこのことからかもしれません。

鎌倉時代の絵巻物「春日権現験記」には、屋敷に運び込まれる鮑や蛤が描かれています。いずれも大きさがそろったものがぎっしりと積まれており、キズのない美しいものばかりが選ばれ送られて来た様子がうかがえます。

蛤の貝殻をつかった「貝覆い」の遊びは、平安時代に貴族達によって遊ばれていました。蛤の貝殻の外側の柄の相方を捜す遊びで貝殻の大きさや柄が揃っていれば揃っているほど面白くなるゲームですから、楽しもうとするとキズの無い美しい貝殻が沢山必要になります。「春日権現験記」のこの場面を見ていると内裏には、色や柄やサイズがそろった蛤の貝殻が豊富にあり「貝覆い」という遊びが誕生したのもそういったことからであろうと思えます。

蛤はその開いている様子から開運の縁起物とも言われています。栄養もありますので、皆さんも是非、お正月に蛤を召し上がってください。