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京都の神社には、初詣の幟が出たり、新年のお飾りが出たり、だんだんとお正月らしい雰囲気が出てきました。
12月13日は事始め。新年の準備を始める日です。京都では、芸妓さん舞妓さんたちが舞の師匠やなじみの店などにご挨拶に行く様子が見られます。昨年はコロナ禍ということで中止になりましたが、今年は開催されたので、ニュースの映像を見て、もう年末かと感じられた方も多かったのではないでしょうか。
今回のコラムは、上賀茂神社権禰宜の米山裕貴さんが年迎えの時期にふさわしい初詣のことを書いてくださいました。初詣の意味をきちんと知ると、正しくお参りしなければという気持ちになりますね。年明けは感染症対策をしっかりして、初詣に行きたいものです。
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「初詣」
気づいたら年末。皆さんの今年1年はいかがでしたでしょうか。
上賀茂神社では12月31日16時より1年の最後の祭、1年間の感謝をお伝えする除夜祭が斎行され、その12時間後の午前5時、1年の始まりの祭、賀茂祭(葵祭)と同様の特殊な神饌をお供えし新年のお祝いをお伝えする歳旦祭が斎行されます。神職はこの歳旦祭を通して、神様に対しての新年のご挨拶も申し上げますが、皆さんも初詣をされるのではないかと思います。初詣とは年が明けてから初めて神社・寺院に参拝をする行事でありますが、この初詣という名称でご参拝を頂くようになったのは、長い歴史の中でごく最近の事です。歴史の流れとともに、この「初詣」という名称が定着した歴史をお話させて頂こうと思います。
もともと我が国においては、「年籠(としごも)り」「恵方(えほう)詣」「初縁日」という行事がございます。「年籠り」とは千年程の歴史があると言われ年末から正月の期間、1年の感謝と新しい1年を無事に過ごせることをお祈りする為、氏神社に籠る習慣です。この「年籠り」が時代とともに大晦日の夜にお参りをする「除夜詣」、元日にお参りをする「元日詣」に変化をしていきました。
この「元日詣」は「恵方詣」とも言われ、江戸時代からの習慣であり元日などの年の初めに縁起の良い方角にある神社・寺院を選んでお参りすることとなっております。「初縁日」は現在でも「縁日」という名称が残っておりますが、同じく江戸時代からの習慣であり、初天神・初卯・初水天宮など、年の初めに縁日が回ってきた時に、それに合わせて神社・寺院にお参りすることを指します。現在の「初詣」という名称が使われるようになったのは大正時代頃と言われていますが、明治18(1885)年の『東京日日新聞』での記事が初出と言われております。
この「初詣」の始まりは鉄道が深く関わっております。明治以降、鉄道業界が力を付け至る所に鉄道を開通していき、交通の便が良くなっていきました。鉄道業界としては、たくさんの人々が動く正月に利用いただけるように神社・寺院の参拝者への宣伝合戦が行われましたが、当時の元日は「元日(恵方)詣」であり、恵方は毎年変わる上に方角も限られていて鉄道業界は安定した参拝者の確保が難しい状況でした。その為、鉄道業界のキャンペーンは次第に方角を限定せず、あらゆる所で正月の乗客を増やす為、主に郊外の神社・寺院へのお参りや、好きな神社・寺院にお参りをするといった今の「初詣」の形を作っていきました。
その影響で大正時代には「元日詣」が薄れていき、「初詣」が定着していったと言われております。時代が流れ戦後になっていくと、人々の新しい交通手段として急速に普及してきた自動車でお参りをする人が増え、参拝だけでは無く自動車の交通安全祈願や車のお祓いも行われるようになっていきます。また、平成の初め頃から企業の正月参拝が増え、仕事始めの日に集団でお参りをするという習慣が始まっていったと言われております。
時代とともに「初詣」という今の形に変わっていきましたが、現在の「初詣」では 皆さん、何をお祈りされているのでしょうか。
新年を迎えるにあたって家内安全・商売繁昌・身体健康等をお願いされる方が多いように思います。今、歴史を申し述べた通り「年籠り」から「除夜詣」「元旦詣」が始まり、「元旦詣」が「初詣」に変化をしていった為、「除夜詣」は現在まで引き継がれることなく無くなってきております。参拝者の中には12月末にご参拝を頂き、神様に1年間の感謝をお伝えされる方もいらっしゃいますが「初詣」をされるということで「初詣」の方よりは少ないように感じます。「初詣」は新年を迎えるにあたってのご参拝ではありますが、年末のご参拝がかなわないのであれば、「初詣」の際に神様に対して「除夜詣」の1年間の感謝をお伝えするということがあってもいいのではないかと考えます。
こういった状況下でありますので今年の正月も神社によっては密を避けた新しい生活様式でのご参拝を頂けるようコロナ対策を行い、「初詣」の期間を延長している所もございます。ですからぜひ来年の正月の「初詣」では神様への要望をお伝えするだけでは無く、まず感謝をお伝え頂くご参拝を心よりお待ちしております。