京都の紅葉も銀杏もだいぶ散り、冬景色に近づきつつありますが、まだ気温はそこまで下がっていません。来週あたりからぐっと冷え込むのでしょうか。
今回のコラムは、お茶博士こと、万の徳淵卓さんです。お正月が徐々に近づいてきていますが、お茶のお正月のお話です。炉開きは、亥の月(旧暦10月新暦11月)亥の日に、炉と言われるお茶用の囲炉裏を開いて火を起こし、その年採れた新茶を頂きます。炉開きに合わせて、茶壷の封を切ることを「口切」と言い、口切の茶事が行われることもあります。
ちょっと季節が遅くなってしまいましたが、冬の入り口に秋の名残のお茶を楽しむのはいかがでしょうか。
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秋上がり茶
秋深まり、山間部では赤や橙、黄色と彩り豊かに紅葉も見頃になってまいりました。季節のうつろいにて肌寒い季節に温かい日本茶が心を豊かにしてくれます。
今回は春に摘んだ新茶を一夏越して秋に出荷する秋上がり茶のお話しを。
お茶つくりの十月は一年で最後のお茶摘みの季節。春は新茶”一番茶”、初夏は”二番茶”、盛夏は”三番茶”、仲秋は”四番茶”または”秋番茶”といいます。
さて、秋上がり茶とは?日本酒は夏を越えて秋になって香味が円熟し旨味がのった「ひやおろし」があるように、お茶も同様に「秋上がり茶」があります。春に摘んだ新茶は若々しい味わいがあるのに比べ、「秋上がり茶」は春から初秋にかけて熟成することによって、摘みたて時の荒々しさがとれ、まろやかさと熟した奥深い味わいが楽しめるのが特徴です。
茶道では秋深まる十一月一日は炉開。お茶のお正月とも言われて、春に作られ、茶葉を入れた茶壺を開封する格式高い儀式があります。つまり、美味しいお茶を愉しむ時節は昔から大切に守られてきた日本の文化なんですね。
緑茶の熟成は冷蔵庫の中で茶葉を寝かせるのが基本です。成分変化は無酸素状態でも進行します。お茶に含まれている旨味成分アミノ酸とさまざまな成分が融合し、熟成が進みます。その成分変化により、新茶特有の若々しい香りから、ほのかにお花や果実を感じる甘い香りを生成していきます。
つまり、ご家庭では新茶の封を切らずに夏を越えて秋に開封する熟成方法が簡単。
この時期はお茶屋さんでも蔵出し茶として販売されておりますので、角の取れた旨みと深いコクのある熟成茶をこの秋に是非味わってみてはいかがでしょうか。