11月23日、新嘗祭が無事執り行われました。神様も、天皇陛下も新米を召し上がり、我々も新米を堪能できる季節がやってきました。ぴかぴかに炊き上がった新米を見ると、なんだかとても幸せな気持ちになりますよね。
今回のコラムは、この季節にぴったりの執筆者。お米ソムリエの美甘朋子さんです。数々のお米関連の伝説をお持ちの美甘さん。年間1000回以上稼働する炊飯器が「精度疲労」を起こすため、1年に一回炊飯器を買い換えられるのはよく知られていますが、販売員さんの説明がすべて素晴らしく、甲乙つけがたいと言うことで、1度に4台買ってしまったこともあるそうです。「炊飯器は試し炊きができないので、販売員さんの言うことを信じるしかない」訳ですが、4台ちゃんと使える美甘家もすごいなと思います。
今年も新米をたくさんいただきましょう。塩をぱらぱらっと振っていただくと、ご飯の甘みが引き立ってとてもおいしいです。
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新米の頃
霜月も半ばもまわって参りました。「三三米拍子」で一年、千回お米を研いで頂くありがたい日々に、この上なく幸せな時期が近づこうとしております。そうです。「新米」の季節がやって参りました。農家さんが丹精籠めて作られて一年がかり、お心の籠もった稲がたわわにお米をつけております。田んぼは見渡す限りの美しい黄金色、素晴らしすぎて気が遠くなりそうです。
その昔、野生のお米を食用に栽培をはじめたのは、今のベトナムと中国国境あたりと言われております。そしてそこから東シナ海を渡り、日本に渡ってきたのは起源前3世紀頃(縄文時代) 、それまでの食料より圧倒的に収穫ができたお米は人の手によって栽培され、「結」という助け合って食料を確保する社会を作り上げていきます。それから三千年近く、日本は「お米」を中心に形成されていきます。日本人がお米を育て社会を作ってきて二千余、その間ずっと願い続けてきたのは、「より白く、より美味しく」という事でした。
お米は稲が実るまで宮尾さんの心游米通信にもございますように、それはそれは手間がかかるものです。そして実った稲からお米を取り出すまでの行程だけでさへ、稲穂からお米を外す脱穀、籾摺り、玄米の精米とこの上ない時間と手間をかけてあの「白いお米」になります。そんなありがたい願いを込めて、その年に収穫された一番綺麗な「お米」を神様に供え迎える「新嘗祭」。彬子女王殿下のお話でより深い意味を知りました。この日が参りますと、神様からのお下がりとして私たちは「新米」を頂く事ができるようになります。新米の入った米袋からお米を米櫃に移す時、お米からの声が聞こえます。「やっと会えたね。奇跡だね。」とそしてお米を研ごうとする時、お米たちはみんなの笑顔です。「美味しく食べてね。奇跡だね 。」
「新米=お米」が主食となったのはほんの70年前です。驚きですが日本人は二千年余脈々とお米を作り続けておりますが、収穫はままならずお米の他にあわ、ひえ、麦、豆などを加えたものを長い間頂いておりました。今のように「お米」だけで頂けるようになった70年前、日本人はやっと主食を「お米」だけにする事ができたのです。お米が大陸から伝来して三千年、日本人が稲作を中心として社会を作ってきて二千年、気候や土地に合うお米を作り続けることによってたくさんのお米が取れるようになって100年、まさに今、奇跡の時に私たちはいるのです。その時に神様に感謝し「お米」作り続けてきたご先祖様に感謝して頂く今、もっともっと「お米」を頂いて良い奇跡の時なのです。
今から60年前、日本人が一番白いご飯を頂いていた頃はお米を一人一年120kg、現在はお一人年60kgです。今、この奇跡の時にお一人100kg(おそれることはございません。たかだかお一人月/8kg、一食に280gご飯二膳頂くだけでこの奇跡の時をありがたく体験出来るのです。二膳のうち一膳は神様の分、もう一膳は神様から頂く私の分、幸せの二膳です。こうして来年には110kg、更には120kgとお米を楽しみたいと思います。「新嘗祭」11月23日、この日を迎え神様に感謝いたしましたら解禁です。「祝 新米」「ヌーボー、お米」「ハレルヤ お米」。手を合わせ、さあいただきましょうー。