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11月になりました。秋もだんだんと深まってきていますが、食欲の秋とも言うとおり、秋はおいしくなる食材が多い季節。栗、さつまいも、柿など、あんこによく合う食材も旬なので、おいしい和菓子が増えるような気がします。

今回のコラムは、心游舎理事で上賀茂神社権禰宜の乾光孝さんが神社に伝わる「菓子」のことを書いてくださいました。菓子はもともとは「果子」で、果物のことを指していたと言われていますが、大陸との交流が盛んになるにつれて、米や麦の粉にはちみつなどを加えて練った団子のようなものが伝わり、唐菓子と呼ばれるようになりました。時代が下がると、ポルトガルやスペインから金平糖やカステラのようなものが伝わり、南蛮菓子と呼ばれるようになります。団子もカステラも、今の日本では「和菓子」です。海外から伝わってきたものが日本のお菓子として変化していくのがおもしろいですね。

秋の和菓子を探しに和菓子屋さんに行きたくなってしまいます。

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上賀茂神社とお菓子

今年の心游舎と京都産業大学特殊演習講義合同での上賀茂神社ワークショップのテーマは「明日も和菓子食べたい」でした。学生は会場で、参加者はご自宅からというハイブリッド方式での配信でしたので、回線が途切れる事なく無事に配信が出来るか緊張感の伴う2時間ほどでした。冒頭、回線が安定する迄、急きょお話をさせて頂いた上賀茂神社とお菓子のお話を今回はご紹介申し上げます。

お菓子というと甘みが重要でありますが、ご存じの通り、砂糖が普及したのは後世の事。正倉院の記録では薬として大陸より少し到来していた事、また『枕草子』に出てくる「つる」より抽出した「あまづら」を氷室の氷にかけて食したその甘みが、上品なものとして紹介されています。

その様な中、神社のお供えである神饌(しんせん)にある「お菓子」は少し甘みとは違う様です。今回は2種類のお菓子をご紹介致します。

ぶと(伏兎・餢飳)

古社にいくつか伝わる唐菓子(とうがし・からがし)と呼ばれるものは、ごま油などで揚げられていますが(素揚げ)、上賀茂神社のものは米粉で練ったもの。兎の形をしたもの、臼の形をしたものと共に「まがり(環餅)」と呼ばれる意味のある曲げ方をしたものが筒状の奉書紙中に納められています。

これは、古くより元旦の歳旦祭(さいたんさい)と呼ばれる祭儀にお供えがなされています。

2、つつみのごりょう(包御料・御菓子〔おんかし〕とも)

賀茂祭(葵祭)と歳旦祭にお供えがされます。奉書紙を二枚重ねその中に包みますが、栗や海藻、煎り玄米、浅草のり、とさかのり、子持ちわかめなどが中に納められています。

この様に考えますと甘みは殆どないと言ってよいと思います。ただ、神社の神饌には最後に「果」として果物がお供えされています。自然の甘みは当時、それはそれは甘いものとして捉えられていた事でしょう。今の時代に生きる私たちには、有難い事に選択肢が増えております。この秋も和菓子から季節の移ろいと共に、収穫の菓銘や意匠から想像を深めて参りたいと思います。