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暑さ寒さも彼岸までと言いますが、本当にお彼岸が過ぎたら涼しくなりましたね。日も随分と短くなり、このまま冬に向かっていくのだなぁと感じます。
先日の和歌ワークショップで、百人一首でも有名な光孝天皇の和歌「君がため春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪は降りつつ」の「若菜」は、七草粥に入れる若菜のことだと乾さんが教えてくださいましたが、今回は春の七草ではなく、秋の七草のお話。
執筆者は、お馴染みの神永曉さんです。春の七草は、やわらかい葉のイメージですが、秋の七草は秋の野で可憐に咲く花のイメージが強いですね。なでしこは「撫でし子」と同じ語感であることから、愛児や愛する女性にも例えられます。愛しんで育てたなでしこのように、「なでしこ」である坂上大嬢を妻とした大伴家持。とてもロマンティックですね。

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【ことばっておもしろい! 9】

なでしこ――なぜ日本女性の清楚な美しさを表す語になったのか?
「七草」は、春と秋のものがあります。「秋の七草」は、秋の野に咲く、ハギ(萩)・オバナ(尾花)・クズ(葛)・ナデシコ(撫子)・オミナエシ(女郎花)・フジバカマ(藤袴)・キキョウ(桔梗)の七種です。今回は、その中のナデシコの話です。
サッカーの日本女子代表チームは、「なでしこジャパン」という愛称で知られています。この「なでしこ」は、植物ナデシコの異名の「大和なでしこ」から来ています。ナデシコの花は、古くから美を表すとされていました。でも、「大和なでしこ」が日本女性の清楚な美しさをたたえる語として使われるようになったのはけっこう新しく、江戸時代後期になってからのようです。「大和なでしこ」は、同じナデシコの仲間の中国原産のセキチクをカラナデシコ(唐撫子)と呼ぶのと対照させた名称だと考えられています。
ただ、古くから日本人がナデシコの美しさをとても愛していたことは間違いありません。『万葉集』にもナデシコを詠(よ)んだ歌が26首収められています。たとえば大伴家持(おおとものやかもち)(718?~785)には、
「我(わ)がやどに蒔(ま)きしなでしこ いつしかも花に咲きなむなそへつつ見む」(巻八・一四四八)
という歌があります。この歌は、家持が坂上大嬢(さかのうえのおおいらつめ)という女性に贈った歌です。自分の家に種をまいたナデシコが咲いたら、その花をあなただと思って見ようという意味の、美しい恋の歌です。坂上大嬢は家持の従妹で,のちに家持の妻となります。
このように、『万葉集』の歌などによって、ナデシコが女性の美しさを表すものと意識され、のちに日本的なという意味合い加わって、「なでしこ」は日本女性の清楚な美しさを表す語になったようです。

ことばっておもしろい!9