心配していた台風10号の被害も、それほど大きなものにはならなかったようで、ほっとされた方も多いのではないかと思います。
秋に吹く激しい風のことを、「野分」と言います。野の草を分けて吹き通る風という意味です。源氏物語の28帖の題名としても知られています。
8月のある日、野分が吹き荒れた後、風のお見舞いに六条院を訪れた夕霧が紫の上を垣間見する場面は、とても鮮烈な印象を与えますが、やはり風の力でしょうか。
今のように天気予報もない時代の人たちは、どのように台風に備えていたのかと思うと、進路の予想もでき、備えることのできる現代に生きていられることは幸せなことなのかもしれないなと思います。
心游米の収穫までカウントダウンです。
それまでに大きな台風の被害が出ないことを祈りつつ。宮尾さんの農作業は、その日まで毎日続きます。
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「草取り」
田んぼに草が生えて稲が十分に育たないとお米の収穫が少なくなってしまいます。
だから田んぼに草を生やさないこと、生えた草を取ることはお米作りでとても大切な作業です。
では、草はお米の収穫を減らすけしからん存在かというと、稲やいろいろな植物が元気に育つこの豊かな土を作ったのは草であり、草と共にいきてきた微生物や虫や動物といったさまざまないのちたちなのです。
草は地球の豊かな土壌を作ってきてくれた尊い存在なのです。 その尊い存在「草」とどう折り合いをつけお米つくりをしたら良いでしょうか?
除草剤のような化学物質を使わず、自然環境・生物の多様性を壊さないように草を抑制することは、地球にとって人類の未来にとって大切なことです。
では無農薬でどんなふうに草と折り合いつけているかというと。 植物は最適な環境を与えられると他の植物より優勢に育つので、稲が元気に育ち、他の草があまり元気を出せないような土の環境つくりをします。
前の年の切ワラが田植え後急速に分解し稲の根の成長を阻害するガスが発生しないよう、稲刈り後から田んぼを乾かし切ワラの分解を進める。
稲の根が成長しやすいゴロゴロの土に耕す。
田植えをした後、中耕除草機で土をかき混ぜ生えたばかりの小さい草を浮かせる。
田んぼの水位を深くして草の発生や生育を抑える。等々です。
稲が小さいうちに草がたくさん生えてしまうと稲の成長を阻害しお米の収穫量を減らしてしまいますが、稲が大きくなってから生えてくる草は収穫量に影響しません。 ですから「稲が大きくなるまで草さん生えるの待っててね」という感じで対応します。
お米つくりの長い歴史の中で培われてきた知恵と、現代の水路等のインフラ整備や機械化による効果的な働きかけも組み合わせて、無農薬でも昔ほど人手をかけずに上手に草を抑え稲を成長させることができるようになってきました。
それでも良いコンディションにできなかったところや機械の爪が届かないところなど、草が生えてしまい、それが大きくなって稲の生育を阻害してしまうことがあります。
そうしたら昔のように手で草を取り稲の生育を助けます。
手で草を取るのは大変キツイ作業です。 しかしこのキツイ作業の中にさまざまな気づきがあり、ひらめきがあります。
身体の負担を少なくするような身体の使い方に気づく。
一緒に作業する人と仲良く、効率よく仕事を進めるためのコミニュケーションや、助け合い、思いやりの心が育つ。
稲と他の草という植物同士の競合・共生の関係ははとても繊細でダイナミックで複雑で完璧な自然の働きである。
素足、素手で作業すると大地にアースした感じで気持ちが良い。
腰をかがめて、手で草を取っていると、さまざまな気づきとひらめきを得ることができます。
こういう経験を重ねながら、もっと上手に草と折り合いがつけられるようになっていくことでしょう。
成長し進化していくことでしょう。
草取りは結構良い作業なのかもしれません。