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あっという間に7月になりました。梅雨らしいお天気が続いていますね。もうすぐ七夕。雨が降らないといいなと毎年思うのですが、雨が降れば皆から空を見上げられることもなく、彦星と織姫は二人きりの逢瀬を楽しめると思うと、雨の方がロマンティックなのかもしれないなとも思います。7月7日の夜には、尾上右近さんにご登場いただくオンラインセッションを予定しております。ぜひ楽しみにしていらしてくださいね。
今回のコラムは、竹工芸家の田邊竹雲斎さんです。田邊さんには、竹籠作りのワークショップを何度かお願いしており、毎回子どもたちの独創的な、世界に一つしかない竹籠ができあがることで大人気です。今回は、世界の美術館・博物館で引っ張りだことなっている竹のインスタレーションについてお話をしてくださいました。伝統と革新は表裏一体。新型コロナウィルスの流行で、世界での活動が中止・中断を余儀なくされているそうですが、今も変わらぬ挑戦を続けていらっしゃいます。
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竹のインスタレーション -伝統とは挑戦なり-
私は代々竹工芸をする家に生まれました。曽祖父が竹を始めたのは明治25年1892年。120年に渡り、親から子へと技を受け継いできています。幼いころから遊びのように竹に触れ、竹で物を作りながら育ってきました。小学生のころ、夏休みに小さな花籠を父に教えてもらい作っていました。小学生なのでなかなかうまくいきません。そんな時祖父が「貸してごらん」といって私の編んでいる籠を手に取り、あっという間に素敵な形の籃を編みました。私はその魔法のような祖父の手の動きと、みるみる美しい形に変化する竹の姿に、子供ながらに魅了されました。「いつかあんな上手に編んでみたい!」私の子供のころ感じた強烈な印象は、現在の私の土台となっています。
大きな作品で空間を作っていくことを「インスタレーション」といいます。私のインスタレーションを構成している技法はこの時、祖父が見せてくれた「荒編み」という田辺家の伝統的な編み方です。私は世界のいろいろな場所に行き、その空間に合わせてコンセプトを持って、竹のアート作品・インスタレーションを制作しています。インスタレーションは展覧会が終わると一本一本竹を丁寧にほどいていきます。そして竹は別の場所に移動して再利用します。作品としての形は無くなりますが、材料である竹は循環していきます。現在展示中のトルコのオドゥンパザル近代美術館で使用されている竹は2018年フランスのショーモン城、2017年ブラジルサンパウロジャパンハウス、NYのメトロポリタン美術館、2016年フランスギメ美術館など世界の各地を旅してきた竹です。サステナビリティ(循環)はインスタレーション最も重要なコンセプトです。
竹のインスタレーションは私にとって「伝統であり革新です」。それは子供のころ祖父や叔父が見せてくれた田辺家の伝統の精神と技術・感性が根底にあります。伝統とは先人の知恵や技術を受け継ぎながら、常に新しいものに挑戦し、独自の世界を創り上げなければいけません。未来への挑戦が伝統をつないでいくと考えています。