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アメリカのある有名なアニメクリエーターがこんなことを言っていたそうです。「日本人は凄い!『漫画』という黒と白だけで描かれた媒体をこれほどまでに面白がれるなんて」と。

彼が言う「日本人は凄い」とは「想像力が凄い」という意味なのだろうと思います。黒と白から、ある世界を想像し構築できる力。彼はその力を『漫画』を通して日本人に見出したのでしょう。

水墨山水画は、言うに及ばず、黒と白の世界です。黒の生き生きとした線で描かれた人物はその人の悦びを、水をたっぷりと含んだ黒い点の群がりは雨に濡れた夏の木々を、私たちに捉えさせます。あるいは厳格に黒く縁どられた山肌の輪郭線は、逆に白い部分を、凍てつく荘厳な雪景として我々に描かせます。

いや、私は「子どもたちに伝えたい日本文化」は「水墨画です!」と言いたいのではありません。黒と白に触発されて何か想像する日本人の力、目の前の黒と白とに誘われ、風の気持ちよさ、水の流れの怖さ、悦びや悩みといった人物の感情、その人が生きてきたドラマ、ひいては人間が歩んできた歴史・・・を立ち上げていく想像力、これこそを大人である我々が先人から受け継ぎ、育み、伝えていかなくては、と思うのです。

煎茶会の場は、想像遊びの場です。茶を喫みながら画や書を読み込んで、陶磁器や様々な工芸品に圧倒されて、そこから想像される世界を、場にいるみんなと言葉によって共有し、誰かが言った言葉が共有された世界をさらに広げ更新する、この連続。芸術を使ったいわば「想像のクラウド」遊びです。

「情報のクラウド」は今も大きく膨らんでいます。いつでもアクセスでき、アップロードすることもダウンロードすることもできます。そんな世界の中で、情報の数々に振り回されるのでもなく、目をつぶるのでもなく、それに誘われ、それを使い、新しい何かを想像する力、これこそを日本の文化力として勉強し育み、また伝えたいと思うのです。
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