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色の名前――国語辞典で色の説明をするのは難しい!

この世の中はさまざまな色彩であふれています。昔の人はこの色彩を区別するために、それぞれに名前を付けてきました。「赤」「青」「黄」もそうですが、日本独自の色の名だけで300以上もあります。

こうした色の名は、国語辞典にも全部ではないのですがのっています。でもここで一つだけ大きな問題があります。色の説明をことばで行うのは難しい、というか不可能に近いのです。「赤」でしたら血のような色といったように、その色に近い具体的なものを使って説明することはできます。

でも、たとえば「縹色(はなだいろ)」という色はどうでしょう。「はなだ」はツユクサのことで、その花の色から付けられた名といわれています。辞典ではこの色を「薄(うす)い藍色(あいいろ)」などと説明しています。ところが、ツユクサで染めた色という「露草色(つゆくさいろ)」という色が別にあるのです。これも「薄い藍色」です。でも、「はなだ色」と「つゆくさ色」は微妙(びみょう)に違っているのです。この違いがどうしてもことばでは表現できないのです。

私は40年間辞典の編集の仕事をしてきましたが、ことばで説明するのはぜったいに無理だと思った語がいくつかありました。その一つが色の名だったのです。