京都は大学が多い街です。新型コロナウィルスの流行が始まったころ、大学の授業は全面的にオンラインになり、街からほとんどの学生さんが消えてしまいました。大学構内はほとんど人が歩いておらず、映画で見るゴーストタウンのようでした。今年度は、対面授業を復活させた大学が多く、授業の前後の時間帯は、学生さんたちがあふれんばかりに道を歩いています。今年は祇園祭の山鉾巡行が開催されることも発表されました。京都の街の日常が少しずつ元に戻りつつあることを感じる今日この頃です。
本日のコラムは、茶筒の開化堂6代目の八木隆裕さんです。心游舎の10周年に合わせ、心游舎オリジナルの茶筒を作ってくださいました。使えば使うほど、自分色に変化していく開化堂の茶筒。手の汗が酸性かアルカリ性かで、赤っぽくなるか、黄色っぽくなるか、変わってくるそうですよ。只今心游舎のオンラインストアからご予約受付中です。心游舎の雪を自分色に染めてみませんか?
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心游舎さんのお茶筒
茶筒とはお茶の葉を入れるものです。
そのまんまなんですが、実はこのことを知っている子供達が世の中に少なくなっているんです。弊堂に社会見学で来てくれる子供達の多くは、お茶を炭酸飲料と同じくらいに捉えてます。お茶は、茶葉から抽出される。そしてその茶葉はそこらへんに置いておくと味が変わってしまう。なのでその茶葉をしっかりと保存しておくものが、実は世の中に必要なんです。そんなことを授業で学んでから来ます。
簡単に保存すると言っても、何に入れておいても良いというわけではないんです。
気密性があって、光を通さない、でも毎日飲むのに使うものだから開けやすくなくてはいけない。気密性=開かないもの、使いやすいもの=すぐに開くもの、相反するのですが、僕たち茶筒を作る職人は、そのバランスをえぇ加減のところで取るのがお仕事なのかと思います。
内側にはブリキ、外側には銅を使い二重構造になっています。ブリキを使うのは、酸化防止になると昔から言われています。ブリキは錫を鉄に塗ったもの、その錫が酸化を防止するのに役に立つと言われています。
今回は、彬子女王殿下とお会いして、今までの茶筒などをご覧いただいている時に、心游舎(さん)のお茶筒があってもよろしいのではとおっしゃっていただいたことから始まりました。心游舎さんのお米で作った玄米茶など何種類か作られていますが、それらをちゃんと保存できるものがあっても良いのではとお考えいただいた様です。
その時に出てきたアイデアが、雪のロゴを使われているので、雪が降ってくるような茶筒が出来たらいいなぁでした。そして雪を手の中で見ているうちに、茶筒の表面の色が手擦れで飴色へと変化していく。そんなものを作れたら良いなと思いました。
そして開けたらそこに雪がある。実は中蓋のツマミも雪で作ろうとしておりました。ただそこのハードルが高かったんです。平面のロゴを立体化する、感覚ではいけてるのですが、実世界ではなかなか思う様なものが出来ませんでした。ほんとすいません、そこは次回への宿題とさせていただいてます。
雪の柄を散りばめ、大きさを調整して、茶筒の天の部分を雲と捉えてなんとなく雪が降り積もってくるイメージで柄を整えさせていただきました。
弊堂の茶筒は、継ぎ目を合わせて蓋をおくとす〜っと下がってまいります。その時にす〜っと雪が降ってくるそんな感覚をご一緒できたら嬉しいなと思い作らせていただきました。
毎日の茶時に手のひらで撫でていただくことで、あめ色へと変化してまいります。それも楽しみながら末長くお使いいただけましたら幸いです。
100年前の茶筒も修理しております。将来調整や修理が必要になったときは、弊堂に送っていただきましたら修理させていただきます。