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昨日は秋分の日。お彼岸のお中日で、街の和菓子屋さんにはおはぎが並び、お墓参りに行かれた方たちも多かったのではないでしょうか。日が短くなったなと思っていましたが、昨日は昼の長さと夜の長さが同じ。これからは冬に向けて、どんどん短くなっていきますね。秋の夜長を楽しみに過ごしたいものです。

今回のコラムの執筆者は、心游舎理事で、太宰府天満宮宮司の西高辻信宏さんです。太宰府天満宮の一番大きなお祭りである、9月の神幸式大祭について書いてくださいました。博多祇園山笠のように、観光客も多く訪れる、誰もが知っているお祭りではありません。でも、地元の方たちがとても大切にしておられるお祭りです。玄関先にお迎え提灯を吊るし、天神様のお神輿が通られるときは腰を落とし、頭を下げられます。子どもたちは、お神輿を追いかけて走っていきます。街の方たちみなさんが、1年に1度天神様が御宮を出られ、街に出てこられるのを楽しみにしておられることがわかる、とても心が温まる行事だと思います。

今年は、去年と違い、緊急事態宣言下のお祭りで、神社の方々が様々なことに心を砕いておられると聞きます。でも、どんな形であれ、街の方たちがこのお祭りを心待ちにしておられるのは、去年も、今年も、来年も、変わらないと思うのです。

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「祈りの姿」

此度の新型コロナウイルス感染症、豪雨災害等でお亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますと共に、御遺族や御関係の皆様に衷心よりお悔やみ申し上げます。また、影響を受けられている全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。

本年は新型コロナウイルス感染症の影響下で、改めて神事の継承と神社の在り方について考え、苦心しながらも神事等を斎行致しております。

当宮には、国家安寧や五穀豊穣を祈念する祭典から、四季や古からの習わしに準じた神事まで、規模や内容も異なる祭典神事が数多くありますが、その中で一番の重儀が神幸式大祭です。平安時代の康和三年(一一〇一)、大宰権(だざいごんの)(そち)大江(おおえの)匡房(まさふさ)により始められ、菅原道真公御在世の往時を偲び御神霊をお慰めし、さらに皇室の御安泰、国家と地域の平安、五穀豊穣を感謝する秋祭りで、福岡県の無形民俗文化財に指定されております。九百年以上の歴史を有するこの神事は、御神霊をお載せした御神輿を中心に、神職・氏子など奉仕者が装束姿と設えによって列を成し、道真公が大宰府での二年間をお過ごしになられた大宰府政庁の南館(榎社)を御旅所として渡御する「お下りの儀」、また還幸する翌日の「お上りの儀」の御神幸を行います。二十五日の例大祭までの期間中、宮司は、その他神職と別の場所にて一人斎戒し、清浄を保つため特別に清められた火(別火)を用いて斎食、潔斎を行い、神事に臨みます。

私自身、三歳の頃から神幸式に奉仕する中で、祖父や父の後ろ姿を見て自然と想いを受け継いできました。具体的な言葉はなくともその姿勢から、祖先である道真公への揺るぎない祈りを感じておりました。三年前には、父が約六十年前に、私が約三十五年前に着用した装束を息子がつけ、三代での奉仕が叶いました。息子が幼いながらも心を整えて一生懸命に神幸式に臨む姿を見ていると、大切なことはこうして自ずと伝わり、歴史が紡がれていくのだと気付かされます。

また神幸式は、奉仕の皆様をはじめ、地域の方々の道真公への敬慕の念を改めて実感する場でもあります。御神幸の道筋にはお迎えの提灯が掲げられ、御神輿に対して手を合わせる地域の方々の姿に感謝の気持ちが溢れます。九百年以上も前から、いかなる社会情勢においても粛々と続けられてきた神幸式は、道真公が永久に鎮まりますこの太宰府の地の人々と、道真公の心の交流の上に繋がれてきた精華(せいか)なのだと毎年心が震えます。

新型コロナウイルス感染症に伴う大変厳しい環境下でありますが、これまで大切に受け継がれてきた伝統に想いを馳せ、未来に向けて歩みを進めて参りたいと存じます。