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京都市内の桜は大方葉桜になりましたが、八重桜や躑躅、藤などが咲き始めました。新緑が萌出てきて、まぶしく、初夏の色どりに近づいてきたような気がします。

でも、暖かくなってきたものの、まだ朝晩は羽織るものがあった方が安心な季節。今回は、神永曉さんが三寒四温についてのコラムを書いてくださいました。確かに三寒四温とはよく言いますが、そんなにはっきりと寒い日と温かい日がわかりやすく続いたりはしないなと思っていましたが、大陸は本当に規則的にくるものなのですね。海を隔てると本当にいろいろと文化が違うものですね。

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【ことばっておもしろい! 10】

「三寒四温」は日本にはない?

もう4月ですからいささか時季外れかもしれませんが、立春を過ぎたころから、「三寒四温」ということばをよく聞くようになります。寒い日が3日続くと、その後の4日ほどは温暖な日が続き、こうした寒暖が繰り返される現象のことです。

でも皆さんは、このような現象を実感したことがありますか。確かにこの季節には、寒い日と温暖な日がかわるがわる訪れますが、「三寒四温」と呼べるほど規則的ではないと思います。

実は『三寒四温』という現象は、もともと日本でのことではなく、このことば自体も日本で生まれたものではないのです。ではどこで生まれたことばかといいますと、中国北部や朝鮮半島で使われていたことばだったのです。ですから、日本ではこのような規則的な現象がほとんど見られないのは当然なわけです。

でも、日本の現象ではないのに、多くの人が「三寒四温」ということばを知っているって、ちょっと不思議だと思いませんか。

実はそれを解く鍵が、大正時代に使われた教科書にあるようです。1918年(大正7年)から使用された、国定第3期の国語の教科書『尋常小学国語読本』です。巻一が「ハナ ハト マメ マス」から始まっているため、俗に「ハナハト読本」と呼ばれた教科書です。その巻十に収められた「京城の友から」という文章の中に「三寒四温」が出てきます。「京城」はソウルの日本統治時代の旧称です。こんな文章です。

「三日四日続いて寒ければ、其の次には又其のくらゐの間暖さが続くといふやうに、寒さと暖さがほとんど規則正しく交替することです。こちらでは昔から之を三寒四温といってゐるさうです」

現在の検定教科書と違って、国の機関が著作、編集した国定教科書は全国の学校で一律に使われたので、その影響力たるや今の教科書の比ではありません。おそらくこの文章を通じて、「三寒四温」ということばが多くの人の記憶に残ったのではないでしょうか。そして、日本でもそれにやや近い現象があることから、やがて天気予報などでもそれを「三寒四温」と呼ぶようになり、一般に広まったものと思われます。