【日本文化の入り口マガジン 和樂web】にて連載中の「彬子女王殿下と知る日本文化入門」の最新号が掲載されました。
「お能を最初から最後まで寝ずに見た経験がない」
先日お能の話をしていたときに、友人に言われた。そんな日本人は多いのではないだろうか。斯く言う私もその傾向があり、中高時代に初めて学校行事の能楽鑑賞会でお能を見たが、何の演目だったかも覚えていないし、とにかく眠かった記憶しかない。大人になってからも、菊慈童を観ていて、菊慈童が布に隠された状態で出てきたことは覚えているのだが、右肩のあたりが冷たいので目が覚めたことがある。見ると、右肩が池のようになって濡れている。思わず「うわっ」と声が出そうになり、必死に飲み込む。気付けば菊慈童はもう橋掛かりのかなただった。ほとんど何も見ずに終わってしまった。正面のいいお席に座らせて頂いていたにもかかわらずである。面のあの小さな目からはあまり見えていなかったことを祈るしかない。絵に描いたような「肩身が狭い」状態で、小さくなって能楽堂を出たのだった。
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